かおなし=Faceless

日常だったり雑談だったり妄想だったり

ショートショート

フランダースの犬 2007-08-06

ベルギーフランドル地方のとある村、そこに一人の少年がいた。 少年の名はネロ。絵を描くのが好きで祖父と親友のパトラッシュと慎ましく暮らしていた。やがて祖父が天寿をまっとうしこの世をさるとネロは天涯孤独の身となった。ネロは幼い頃からの夢である画…

ホワイトではないらしい 2007-06-27

アンパンマン「僕たちがヒーロー戦隊を組んだらどうなるのかな?」 カレーパンマン「やめろよ。」 食パンマン「どうして?」 カレーパン「どうせ俺が黄色って決まってるから。」 メロンパンナ「うわー、はまりすぎね。」 アンパンマン「じゃあ僕は中身が餡だ…

世を分かつ川 2005-05-25

「・・・・・患者の・・・・・意識が・・・・このままでは・・・・・・危険・・・・・・」 目の前に川が広がっていた。 初めて見る川で向こう岸は見えない。 向こう岸が見えていないにもかかわらず、僕には目の前にあるモノが川で、向こう岸があることもわか…

女たらし 2006-05-17

「女たらし」になりたいと思いました。 「女たらし」、つまりモテモテの一形態です。ですが残念なことにモテモテであった経験がないので「女たらし」がどういう物であるのかがわかりません。でも、「女たらし」がどういうものであるかといったらおそらく「女…

悪代官 2006-05-13

「しかしのう、常習屋、殿への献上品をそちに任せるというのは簡単な話ではないぞ。我が藩では、殿への献上品はこれまで越前屋がとりしきるのがしきたりとなっておる。殿の覚えもめでたく、越前屋の評判もよい。」 「なにをおっしゃいますお代官様。わたくし…

クサいところ 2006-04-12

「ヤツの足取りを見失いました。」 「なんだと?」 「もうしわけありません、。すべての追跡が空振りです。」 「馬鹿な! 探せ、もう一度、クサイところから探せ!」 「は、しかし、まるで消えたみたいに気配すら消えてしまって・・・・・。」 「なに、消え…

ラブレター 2006-02-24

「彼女への想いを手紙に託してみようと思う。」 「なに? いまどきラブレターか?」 「‘いまどき’って言うな。まあ‘古風’とでも表現してくれ。」 「ラブレターなんてやめとけ、時代にあってない。」 「いや、時代が変わろうとも不変のものは存在する。この俺…

羊を数える夜 2006-01-24

なぜだか眠れなかった。 眠気は十分にあるのだけれど眠れない。どうしてだろう? 僕は布団の中でなんども寝返りをうって寝ようとしたけれど駄目だった。さてさて、こういうときはいったいどうしたらいいのだろう? 眠れないといっても眠気はたっぷりあるのだ…

パブロフの魚 2005-08-30

福島君の家へ行ってみるとテーブルの上にベルがおいてあった。 どんなベルかというと、なんかこう、お金持ちのテーブルの上に置いてあってそれを鳴らすと、白いひげを生やしたいかにも紳士な執事がどこからともなく現われそうなベルだといったらわかってもら…

3年4組金髪先生5 2005-08-19

さんねーん よんくみー きんぱつせんせーい 「で、希望の進路は?」 「もうどこでもいいからとにかく進学したいです。」 「進学ってなあ。はっきり言ってお前の成績で選べるところは・・・・・。」 「贅沢は言いません。とにかくどこでも入れるところならな…

鬼 2005-06-24

ドンッ! 背中を突き飛ばされた。 朝の駅のホームだった。 一瞬なにが起こったのかわからなかった。反射的に右足を大きくホームの端ぎりぎりに踏み出しなんとか持ちこたえて転倒することは免れた。一瞬だけ遅れて電車がその右足のつま先をかすめながらホーム…

3年4組金髪先生4 2005-06-22

「じゃあ、希望の進路は?」 「どこでもいいから国公立大に入りたいんですが。」 「なるほど、国公立か。」 「はい。」 「悪いんだけどな、先生、今、進路希望調査をやってるんだ。進路無謀調査じゃないんだ。」 「特に希望とかないんだけど。」 「そういう…

3年4組金髪先生3 2005-02-18

「こんなところでぼんやりして、なにをしてるんだ?」 「あ、・・・・・」 「いま、何時だと思ってるんだ。」 「・・・・・」 「学校にも行かずにこんな昼間っから公園のベンチで一人座ってぼんやりして、まるでリストラされたてのサラリーマンだな。まだお…

佐賀さんと僕4 2005-01-17

ぶふっ! むせかえって飲みかけのお茶を噴出してしまった。 「彼氏ですか? 彼氏ができたんですか?」 「そう。」 と、休憩室で僕の問いにあっさり答えたのは我が社の関取、いや違う横綱、間違い親方、じゃなくて女性事務員の佐賀さんだ。 「そんなに驚くこ…

アトムと餅つき 2005-01-13

「ありがとう、ありがとうアトム!」 何度も何度も感謝の言葉を浴びせられてアトムは複雑な気分になった。 些細なこととはいえ、このクラスメイトである友達から感謝されるのは至極当然であったにもかかわらずアトムは居心地の悪い気分を味わっていた。 些細…

夏が嫌い 2004-08-12

暑い暑い。 僕、彼女の部屋を訪れて、僕、彼女の部屋のドアを開けて彼女に挨拶します。 「こんにちは。」 彼女、部屋の中の彼女、ぼんやりしたまま返事をしてくれません。 少し顔色が悪い彼女、僕、彼女のこと心配になって尋ねます。 「今年の夏、すごく暑い…

苦いコーヒー 2004-06-18

なぜだかわからないが僕はこの日記を病院で書いている。 美味いだけでなく、比較的珍しい種類のコーヒーが飲めるという喫茶店を知り合いから紹介された。さっそくその店へ行ってみる。 電車に乗る。数十分ほど揺られ、今まで降りたことのない駅で電車を降り…

鉄腕アトム

クラスメートが話しかけてきた。 「おい、アトム。ちょっと宿題を写させてくれよ。」 アトムはちょっと躊躇した。それはイケナイことだからだ。 アトムの脳であるコンピューター(SONY製)の記憶領域(ハードディスク)にはイケナイことはしていけないと…

ワン切り

まあたまには変わった話もいいんじゃないですか? ここ最近、僕が体験した話なんですけど聞いてください。 僕の話がなんの話かというというとですね、知らない人はいないと思いますけどワン切りの話です。ワン切りの説明は必要ないですよね。最近減ったとは…

出せ

「あ、もしもし? 久しぶり、最近どうよ? あ、別に用ってわけじゃないんだけどさ、なんていうの? ちょっとまあご無沙汰してるからさ、どうしてるかな? って思ってさ。なんていうか、ご機嫌伺いみたいなもんさ。 で、どう? ふうん。相変わらずか。 相変わ…

三匹の猿の話

この世が始まってから、いつからだったか誰にもわからないがその猿たちは気づいたときにはすでに存在していた。 猿は三匹いてそれぞれ「ミザル(見猿)」「キカザル(聞か猿)」「イワザル(言わ猿)」といい、世の中を裏で支配していた。 見ザルは「見ない…

佐賀さんと僕3

ほら、もうすぐ2月も終わり、ということは今年ももうすぐ6分の1が終わるということだよ。で、今年に入ってからなんか変わったことあった? なんて話題を佐賀さんがするものだから、僕、早くも今年の出来事を振り返ることになりました。 「そういや僕、今…

あなたを分けてください

「 知ってましたかこのビルのことを、けっこう有名なはずなんですけどね。 半年の間に9人も飛降り自殺があったんですよ。この屋上からひゅーっと、ひゅーっとね。 なんせ20階建てのビルですから、飛降りた人も大変です。もう落ちた瞬間粉々ですよ。そりゃ…

佐賀さんと僕2

訪問のアポを取っていたお客が都合が悪くなり、午後からの仕事がおじゃん。 みんな出払ってしまった事務所の自分の席で独りポカーンとして過ごす。そんな僕へ誰かが声をかけた。 「あれ、ナカムラ君、なにやってんの?」 お、親方? いや失礼。声をかけてき…

佐賀さんと僕

年末の話。 年末といえば忘年会。忘年会にはたいてい二次会が付き物で、二次会でなにをやるかといえば、どこへ行くかといえばだいたい決まっている。僕たちが忘年会の二次会でどこへ行ったかと言うとそう多くない選択肢の一つ、カラオケボックスへ行ったのだ…

坂の途中

『背中を見せちゃいけない。坂の途中で振り向いちゃダメだよ。後ろには誰・・・・・・・・』 誰? 『誰』の後にあいつなんて言ったけ? 幼馴染のあいつがそろばん塾から帰る途中にある坂で死んだのは去年だった。ちょうど今頃、夏休みに入ったばかりのころ。…

アトムと家族

「ただいま。」 アトムが学校から家へ帰ると、そこではオトウサンとオカアサンが待ち構えていた。 「おかえりアトム、早速だがこっちへ来なさい。」 オトウサンが玄関へ顔も見せずに声だけでアトムを呼んだ。ソナーによると声は居間からだ。アトムは「なんだ…

無人島

気がつくと私は砂浜で倒れていた。 波打ち際で倒れていた私の足元に波が寄せて引き寄せては引いている。 ふと隣を見ると犬が私と同じように横たわっている。 いったいこれはどうしたことだろう? そうだ。思い出した。 私の名はタロウ。 私は4人の仲間たち…

魔王封印

僕はかつて魔王を封印したことがある。 それはとても寒い日だった。 当時学生だった僕はあてもなくふらふらするのが好きな人間だった。その日も僕は原付にまたがるとあてもなく学校をサボってふらふらと出かけた。 本当に何のあてもなく、ふと思いつきで山の…

スピーチ

「まずは新郎新婦のお二人に心からのお祝いを申し上げたいと思います。おめでとうございます。 結婚するお二人を前にこんなことを言うのもなんですが、‘好き’とか‘愛’というものは本当に不思議なものだと思います。あと‘恋’というのも不思議なものですね。 …