かおなし=Faceless

日常だったり雑談だったり妄想だったり

ショートショート

ボまでの遠い道のり

福島君の家へ行ってきた。 行ってきたものの、特にこれといってすることもないのでぼんやりしていた。 「ねえ、最近ぱーっとしないねえ。」 「うーん、そうだねえ。」 などと、非常に盛り上がらない。 意味もなくぼんやりしていると 「なんか最近面白いこと…

神話の世界

昔々、あるところにオジイさん(*1)とオバアさん(*2)がいました。 いつものようにオジイさんは山へシヴァ狩(*3)に、オバアさんは川へ宣託(*3)に行きました。 オバアさんが川で宣託をしていると大きな桃(*5)が流れてきました。それはとても大きく一…

頭痛

風邪をひいたかもしれない。 頭が痛い。とても頭が痛い。 割れるように頭が痛い。 痛い頭を抱えながらフラフラと街をさすらっていると、耐え難いほどの痛みが僕の頭を襲い僕は小さなうめき声を上げながらその場に倒れた。 たまたまその周囲にいた人々は崩れ…

公園

夕闇の公園。 ブランコで一人遊ぶ子供。 それをベンチで眺めるお年寄り。 「ねえ坊や。」 「なあに?」 「坊やはどこのおうちの子か知らないけれど、もうずいぶんと遅い時間だよ。もうすぐ真っ暗になっちゃうよ。」 「大丈夫だよ。」 「大丈夫じゃないよ、早…

顔のないオバケ

昔々、それはすごく昔々、あるところにオバケがいました。 あるところに顔のないオバケがいました。 オバケは思いました。 どうして僕には顔がないのだろう? オバケは祈りました。オバケは神様に祈りました。 神様お願いです、僕に顔をください。 神様は尋…

3年4組金髪先生 2

「今日の授業は三角関数だ。まずこの小テストをやってもらう。今までちゃんと授業を受けていればそう難しくないぞ。試験時間は15分だ。」 「え~、テストですか~!?」 「はーい、そこそこ。いちいち文句を言わない!繰り返していうが決して難しい問題じ…

山口さんと僕

「えーっと、そこを右に曲がってください。」 「またですか?」 タクシーの運ちゃんがそういうのも無理はない。さっきから僕はこのタクシーをグルグルと同じところばかり走らせている。いったい同じ場所を何周したのだろう? コトの発端は高校時代の後輩の山…

家政夫

その時、私は見てしまったのです。 こんばんは、家政夫です。 家政婦ではなく、家政夫です。 どうぞ「マサオ」と呼んでください。要するに政夫です。「家」は苗字です。 つまるところ、昨今では家政夫たるもの見るべきものを見てしまわなければ家政夫として…

世界の終わり

世界は明日滅びるのだ。 足元を砂ぼこりが転がりぬけていった。 堤防の上に立ち空を見あがると焼けただれたような赤い色が広がっている。 僕は時計を見た。時間は十分だ。僕は堤防から砂浜に飛び降りた。 僕は海に会いにここまできたのだ。でも海は遠くにい…

薫河家

久しぶりに香川(仮名)さんの店にいった。飲み屋だ。 屋号は「薫河家」、読みは「かがわや」、名前の漢字をかえてあるだけ。カウンター席しかなくて小さいけど刺身が美味い店だ。香川さんは僕より若いんだけど、24歳で独立して店を開いた努力家だ。ちょっ…

リング

映画好きの福島(仮名)君の家に行った時のこと。 映画好きといっても福島君はけっしてマニアと呼べるほどでもなく、ハリウッド系映画に偏ったよくいるタイプの映画好きだ。でも普通の人よりはかなりの量の映画を見ているのは確かだし、彼の家には映画のビデ…