かおなし=Faceless

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リング

 映画好きの福島(仮名)君の家に行った時のこと。

 映画好きといっても福島君はけっしてマニアと呼べるほどでもなく、ハリウッド系映画に偏ったよくいるタイプの映画好きだ。でも普通の人よりはかなりの量の映画を見ているのは確かだし、彼の家には映画のビデオやDVDがごろごろと転がっている。ちょっとうらやましい、僕も映画はそれなりに好きだから。


 ただその大量のビデオの2割が「ガンダムシリーズ」で、

 「オレは邦画はアニメとアダルトビデオしか見ない。」

 と豪語しているのはどうかと思うし、その前にアダルトビデオを邦画とカテゴリー分けしてしまう福島君が不思議だ。


 その福島君の部屋で珍しく邦画のビデオを見つけた。公開当時はかなり評判になった「リング」だ。あれだけ評判になった映画だけど僕はまだ見たことがない。

 「あれ、福島君。これ‘リング’じゃん。珍しいよね、福島君が邦画なんて。」

 「ああ、それか。まあ、あれだけ話題になった映画だからね。」

 「ふーん、僕は結局観てないんだ。これ借りていい?」

 「…ダメだね。それは貸せない。それは一人で見ないほうがいいよ。」

 「え?なんで?そんなに怖いの?」

 「それもあるけど、ラストが忙しいから。」

 「はあ?忙しい?」

 「うーん、どうしても観たいなら今からここで観ていくといいよ。そのカーテンを閉めてくれ。」


 「忙しい」っていうことがどういう意味かよくわからないのだけれど、とりあえずカーテンを閉めて部屋を薄暗くした。福島君がビデオをデッキに挿入して「リング」が始まる。

 感想としてはよくできた映画だと思う。ストーリーは知らない間に引き込まれていくような感じで、登場人物の形のない恐怖感が伝わってくる。ただ福島君がいったとおり確かにラストが忙しかった。

 

 画面から出てこようとする貞子を福島君と二人で画面へ押し戻すのに忙しくて感想どころじゃなかったのだ。