顔のないオバケ
昔々、それはすごく昔々、あるところにオバケがいました。
あるところに顔のないオバケがいました。
オバケは思いました。
どうして僕には顔がないのだろう?
オバケは祈りました。オバケは神様に祈りました。
神様お願いです、僕に顔をください。
神様は尋ねました。オバケの祈りを聞いてオバケに尋ねました。
お前に顔をあたえたらお前はその顔で何がしたいのだ?
オバケは答えられませんでした。
昔々オバケがいました。顔のないオバケがいました。
顔のないオバケ、かおなし、かおなし、かおなしオバケ。
オバケは思いました。
僕には顔がないのにどうしてみんなには顔があるのだろう?
猿にも犬にも猫にも鯨にも烏にも燕にも蝶にも百足にも鮫にも顔があるのに僕だけかおなし、かおなしは僕だけ。
オバケは祈りました。オバケは神様に祈りました。
神様お願いです、僕に顔をください。
神様は尋ねました。オバケの祈りを聞いてオバケに尋ねました。
お前に顔をあたえたらお前はその顔で何がしたいのだ?
オバケは答えました。顔のないオバケ、かおなしオバケ、必死で答えました。
僕は僕の顔をみんなに見てもらいたい、生き物みんながそうしているように僕の顔を見てもらいたい。
神様は尋ねました。オバケの答えを聞いてオバケに尋ねました。
お前はみんなに顔を見せるというけれど、どんな顔を見せるのだ?
オバケは答えられませんでした。
昔々オバケがいました。顔のないオバケがいました。
顔のないオバケ、かおなし、かおなし、かおなしオバケ。
オバケは思いました。
僕には顔がないのにどうしてみんなには顔があるのだろう?
猿にも犬にも猫にも鯨にも烏にも燕にも蝶にも百足にも鮫にも顔があるのに僕だけかおなし、かおなしは僕だけ。
世界中で僕だけがかおなし。
オバケは悲しくなりました。すごくすごく悲しくなりました。悲しくなって泣きました。
世界中で一人ぼっちのかおなしオバケ。かおなしが悲しくて、一人ぼっちが寂しくて、顔のないオバケ、かおなしオバケ泣きました。
かおなしオバケ、泣きながら神様に祈りました。
神様お願いです、僕に顔をください。
神様は尋ねました。オバケの祈りを聞いてオバケに尋ねました。
お前に顔をあたえたらお前はその顔で何がしたいのだ?
オバケは答えました。顔のないオバケ、かおなしオバケ、必死で答えました。
僕は僕の顔をみんなに見てもらいたい、生き物みんながそうしているように僕の顔を見てもらいたいのです。
神様は尋ねました。オバケの答えを聞いてオバケに尋ねました。
お前はみんなに顔を見せるというけれど、どんな顔を見せるのだ?
オバケは答えました。顔のないオバケ、かおなしオバケ、必死で答えました。
僕が悲しいとき悲しい顔を、僕が寂しいとき寂しい顔を、僕が嬉しいとき嬉しい顔をみんなに見てもらいたいのです。
神様は尋ねました。オバケの答えを聞いてオバケに尋ねました。
お前に顔をあたえれば、お前は目を、耳を、鼻を、口を持つことになるだろう。お前は目で何を見、耳で何を聞き、鼻で何を感じ、口でどんな言葉をつむぐのだ?
オバケは答えられませんでした。
神様はさらに尋ねました。
お前には心がない、心がないものに顔を与えてどうなるというのだ?
昔々オバケがいました。顔のないオバケがいました。
顔のないオバケ、かおなし、かおなし、かおなしオバケ。
世界中で僕だけがかおなし。
オバケは悲しくなりました。すごくすごく悲しくなりました。悲しくなって泣きました。
世界中で一人ぼっちのかおなしオバケ。かおなしが悲しくて、一人ぼっちが寂しくて、顔のないオバケ、かおなしオバケ泣きました。
かおなしオバケ、泣きながら思いました。一人ぼっちはイヤだ。一人ぼっちはサミシイ。一人ぼっちはコワイ。僕だけが一人ぼっちなんだろうか?かおなしの僕だけが一人ぼっちなんだろうか?
一人ぼっちはイヤだ。一人ぼっちはサミシイ。一人ぼっちはコワイ。
かおなしオバケ、泣きながら神様に祈りました。
神様お願いです、僕に顔をください。
神様は尋ねました。オバケの祈りを聞いてオバケに尋ねました。
お前に顔をあたえたらお前はその顔で何がしたいのだ?
オバケは答えました。顔のないオバケ、かおなしオバケ、必死で答えました。
僕は僕の顔をみんなに見てもらいたい、生き物みんながそうしているように僕の顔を見てもらいたいのです。僕が悲しいとき悲しい顔を、僕が寂しいとき寂しい顔を、僕が嬉しいとき嬉しい顔をみんなに見てもらいたいのです。僕がかなしいこと、僕が寂しいこと、僕が嬉しいこと、僕が思ってること、みんなに知ってもらいたいのです。
神様は尋ねました。オバケの答えを聞いてオバケに尋ねました。
お前に顔をあたえれば、お前は目を、耳を、鼻を、口を持つことになるだろう。お前は目で何を見、耳で何を聞き、鼻で何を感じ、口でどんな言葉をつむぐのだ?
オバケは答えました。顔のないオバケ、かおなしオバケ、必死で答えました。力いっぱい答えました。心のそこから答えました。
僕は目でみんなの顔を見ます、耳でみんなの声を聞きます、鼻でみんなを感じ、口で思いを伝えます。僕と同じように悲しいもの寂しいものがいても、もう大丈夫だと伝えるのです。
神様はさらに尋ねました。
お前には心がある。お前は顔が欲しいかおが欲しいというけれど、もうすでにお前は顔を持っているのではないか?
そして神様はかおなしオバケを人間と呼びました。