いらっしゃいましたら
「○○からおこしのナカムラさん、○○からおこしのナカムラさん、いらっしゃいましたらお連れ様がお待ちです。一階インフォメーション前までおこしください。」
放送で自分の名前を呼ばれるというのは何故だかとても恥ずかしい。何故呼出放送というのはあんなに恥ずかしいのだろう。
某巨大ビル内で呼び出されたのだけど、放送のとおり一階インフォメーションまで行くと赤の他人たちが僕の方をチラッと見て
「あいつが今呼び出されていた奴だ。」
「ナカムラというのはあいつか。」
といいたげな目で見てくる。(単なる被害妄想だろうか?)
なぜか理由もなく場違いに目立ってしまったようで落ち着かない気分になる。
僕に呼出放送をかけた人物はインフォメーションのちょっと左側にいた。僕は彼を見つけるとあいさつのかわりに文句を言ってやった。
「おい、恥ずかしいじゃないか!なんでいきなり呼出放送なんかするんだよ。」
彼は憮然とした顔で
「待ち合わせた場所に待ち合わせ時間にいない奴が悪い。」
と言った。僕たちが待ち合わせていたのは本屋だ。そして僕はその本屋にちゃんといたのだ。
「なんだよ、僕はちゃんと本屋にいたよ。」
「嘘だ、オレあの店の中を2週してお前を探したけどお前いなかったぞ。遅れてきたんだろ。」
「遅れてないよ。僕も呼び出されるまで何週したか覚えてないけど君を探してたんだ。」
僕たちが待合わせしていた本屋というのはとても大きい店なので、考えてみれば本屋の中のどのコーナーで待ち合わせるかを決めていなかった僕たちが間抜けといえば間抜けだったのだけど。お互い入れ替わりで各コーナーを探して歩いていた可能性もある。
「ホントかよ?」
彼、すなわち岡山君は疑わしげな目で僕を見た。
ああ、なんて腹立たしいんだろう。
呼出放送ってなんで腹立たしいんだろう。
なんでこんなにうっとおしいんだろう。
僕もいつかチャンスがあったら復讐の意味を込めて放送してやろう。
「○○からおこしの岡山さん、○○からおこしの岡山さん、いらっしゃいましたらいなくなってください。」
と。