3年4組金髪先生3 2005-02-18
「こんなところでぼんやりして、なにをしてるんだ?」
「あ、・・・・・」
「いま、何時だと思ってるんだ。」
「・・・・・」
「学校にも行かずにこんな昼間っから公園のベンチで一人座ってぼんやりして、まるでリストラされたてのサラリーマンだな。まだお前にゃ10年は早い境地だ。」
「・・・・・」
「何か言うこととかないのか?」
「せ、・・・・・」
「なんだ?」
「先生には関係ないだろっ。」
「ふう、・・・・・よいせっと。」
「な、なんで隣に座るんだよ!」
「先生がなにしようがお前には関係ないだろ。」
「ちっ・・・・・」
「露骨に舌打ちをしてくれるなあ。ま、お前は関係ないなんていうけどオレとお前には立派な関係があるんだよ。」
「はっ、やめてくれよ。いまどき熱血教師なんてドラマの中でしか流行らないよ。」
「少なくともオレとお前は知らない顔じゃないだろう。少なくとも顔見知り以上の関係だ。そしてお前が学校に行かずにこんなところで所在無げにぼんやりしていたら心配くらいはする程度の関係でもある。」
「はっ、心配ね。心配するだけなんだよな。」
「おお、心配ってやつはいいぞ。いいか? 世の中心配すらしてもらえないヤツは本当に救われない。それを考えたら前は救われるヤツだ。安心していい。」
「な、なんだよそれ? 心配してやってるんだって恩に着せてるつもりかよ!」
「なんだ? お前はオレが心配すると恩を感じるのか?」
「・・・・・別に、そんなわけないだろ。」
「じゃあいらん心配をするな。」
「・・・・・」
「恩に着せるために人のことを心配するなんてヤツはいないよ。心配ってのはなんかの目的をかなえるための手段じゃない。誰かが誰かのために勝手にやることさ。」
「・・・・・」
「なあ?」
「・・・・・」
「なんで学校に行かないんだ?」
「・・・・・聞くなよ。答えたくないんだよ。」
「お前さぁ・・・・・」
「?」
「心が傷ついたってことあるか?」
「・・・・・・・・・・」
「オレはあるぞぁ。話したくないこととか思い出すことだけでもいやなこととかな。」
「・・・・・」
「心が傷つくとたまんないよな。なんといっても心って大事だしな。その心が傷ついちまったらなんかどうしようもない。心ってヤツは自分のためのものですげえ大事なものなんだよ。でもな、お前知ってるか?」
「?」
「心配ってな、‘心を配る’って書いて心配って言うんだよ。」
「・・・・・」
「大事な大事な自分の心を誰かのために配ってわけちまうのが心配ってヤツだ。」
「・・・・・」
「わかるか? 大事な自分の心をたとえ少しでも誰かに与えちまうのが心配なんだよ。」
「・・・・・うん。」
「いつも授業中、お前とぎゃあぎゃあ騒いでる馬鹿仲間いるだろ。」
「・・・・・馬鹿って言うなよ。」
「あいつらだって今のお前を見たら、お前のことを大なり小なり心配するんじゃないか?」
「・・・・・そうかな?」
「ま、世の中にはされたらかえって迷惑な心配ってのもあるがそれでもありがたいとは思わないか? 心配されるってことを。」
「・・・・・そう、なのかな。」
「こんなことを先生が言っちゃ本当はいけないんだろうが、オレはお前が何か大事なことやどうしてもやりたいことがあって学校に行かないんならそれはそれでいいと思う。でも何もしないでただここでぼんやりしてるだけならやめておけ。ここにいても何がどうなるわけでもない。ただぼんやりしたいだけならせめて学校でぼんやりしろ。ここでぼんやりしてるだけとはきっとそれだけで違う。」
「・・・・・わかったよ、先生。」
「それにここにはお前の馬鹿仲間すら居ないからな。」
「く、馬鹿って言うなよ先生。」
「お、やっと笑ったな。」
「ああ、もう、わかったよ先生。」
「・・・・・そうか。」
「でもさ先生・・・・・。」
「どうした?」
「なんで先生は学校にも行かずにこんな昼間っから公園に来てるんだ?」
「聞くなよっ! 答えたくないんだよっ!」