かおなし=Faceless

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女たらし 2006-05-17

 「女たらし」になりたいと思いました。

 

 「女たらし」、つまりモテモテの一形態です。ですが残念なことにモテモテであった経験がないので「女たらし」がどういう物であるのかがわかりません。でも、「女たらし」がどういうものであるかといったらおそらく「女をたらす」モノだと思います。
 とりあえず、「女たらし」という単語から「女をたらす」ということがどういう物であるかを想像してみました。女をたらす、足らす? 垂らす?
 「足らす」では意味が理解しがたい物がありますが、「垂らす」であるなら容易にその状況が想像できます。おそらく「女を垂らす」と言うからには「女をぶら下げる」もしくは「女をつり下げる」ということです。
 しかし考えてみれば、「女をぶら下げる」というのは人間一人を吊し上げるわけですからちょっと大仕事です。このあたり、正しいやり方だとか、容易にできる初心者向けの方法だとかあるかもしれません。そこでふだんから「女のことなら俺に任せろ」と言っている知人に、「女をうまく吊り下げる正しい方法はどんなものか?」と質問してみたところ彼はちょっと顔を赤くしつつ、「ああそういうのが好きなのか」と意味深な表情でうなずきつつ、「まあ人の趣味は人それぞれだから・・・・・。」と言って「初心者にもわかる図解付き縛り方特集」とデカデカ書かれた雑誌を僕に渡し、「家に帰ってからこっそり読みたまえ」となぜか目を合わさずに言いました。彼の怪しげな態度の理由がよくわかりませんが、吊すための教材は手に入りました。
 さて、教材が手に入ったのはいいものの吊すためには頑丈な、人間一人の体重を支えられるロープと、そのロープをぶら下げる梁のようなモノが必要です。ロープは幸いなことに近くのホームセンターで手に入ります。しかしそのロープをぶら下げる場所がありません。市の運動公園にある屋外バスケットコートのゴールなどはとてもぶら下げやすい気がするのですが、どうも場違いなような気がしました。世間の「女たらし」たちはいったいどこで女を吊り下げているのでしょう? ひょっとしたら吊り下げ専用のウィンチとか持っているのかもしれません。困りました、ウィンチとは高価なアイテムです。初心者がいきなり投資するには高価すぎるアイテムな気がします。途方に暮れた僕はさっきの知人にまた相談することにしました。「垂らすというのはなかなか難しいことだね」と僕が言うと彼はまた顔をちょっと赤くしつつ「そそ、そ、そうなのか?」とすこしどもったように言った後、「少し太めのローソクを買えばいいと思う」とやや控えめな口調でアドバイスをくれました。どうして「女たらし」にローソクが必要なのかわかりませんがとりあえず彼のアドバイスにしたがい、仏具店に寄り高級亀山ローソクの一番大きいサイズのモノを購入しました。
 なかなかどうして、女たらしへの道は遠いようです。ローソクを買ってはみたもののこのローソクになんの意味があるのかもわかりません。とりあえず部屋の明かりを消し、ローソクに火をつけてみました。「女たらし」とは凡俗たる僕が簡単にたどり着くことができない一つの境地なのかもしれません。
 薄暗い部屋の中ゆらめくローソクの火、僕はその火を眺めながら目を閉じ、足を座禅の形に組みました。きっとこのローソクの火が燃え尽きるときには「女たらし」についてなにかわかる、悟りが開ける、そんな予感を抱きながら。