悪代官 2006-05-13
「しかしのう、常習屋、殿への献上品をそちに任せるというのは簡単な話ではないぞ。我が藩では、殿への献上品はこれまで越前屋がとりしきるのがしきたりとなっておる。殿の覚えもめでたく、越前屋の評判もよい。」
「なにをおっしゃいますお代官様。わたくしども常習屋が越前屋に劣るとでもお思いであられますか。」
「わしはそのようなことを申しておるのではないぞ、常習屋。」
「はは、それはさておきお代官様。お代官様は甘い物がたいそうお好きとか。」
「ほう、そのようなことをよく存じておるのう、常習屋。」
「なんのなんの、他ならぬお代官様のことでございますから。こちらに手前どもがお代官様のためにご用意した特別なまんじゅうがございます。これをお一つお召し上がりになられますれば、お代官様のお考えもきっとお変わりになるはず。ささ、どうぞお召し上がりください。」
「そちも悪よのう、常習屋。」
「いえいえ、お代官様にはとうていかないませぬ。ささ、まんじゅうの中身は山吹色の特製餡子でございます。」
「・・・・・それ、食べられるの?」