出せ
「あ、もしもし?
久しぶり、最近どうよ?
あ、別に用ってわけじゃないんだけどさ、なんていうの? ちょっとまあご無沙汰してるからさ、どうしてるかな? って思ってさ。なんていうか、ご機嫌伺いみたいなもんさ。
で、どう?
ふうん。相変わらずか。
相変わらずっていってもさ、なんかこう、ちょっとくらい生活に変化とかないの? 仕事とかどうよ? 何の仕事してんの?
あ、そっかそっか。そういやそうだった。
じゃああの仕事ずっと続けてるんだ。
いや、いいんじゃない? この不景気なご時世でやってけるんだからいいじゃないの。
そういやお前、相変わらずっていってもさ、アレどうしたの? アレ、アレだよアレ。
あ、いかん。言い方悪かった。アレじゃなくてさ、ごめんごめん、あの娘どうした? 彼女、彼女いたろ?
え、マジ? マジっすか?
そうか、決まったのか。
うっひゃー、そうか、なんかすげーな。
いや、そういう意味じゃないって。
なんかお前が結婚するって聞いたらなんかね、もう超ビックリ! みたいな。
別に何の不思議もないんだけどさ。お前ら付合い長いし。
で、いつだって?
へー、さ来月。んでなに? オレも式には招待なんかされちゃったりするわけ? なんなら歌っちゃうよ?
いやいいよ、別に。遠慮すんなよ。スピーチだっていいし。でも司会はかんべんな。
だからさ、遠慮すんなって。ほらオレってこの世界じゃ主役になれない盛上げ役じゃん。だから主役の君のためにガーッと盛上げるよ、ガーッと。
だーかーらー、遠慮すんなって。ちゃんと出れるって。
いいからいいから、出るって、出るって言ってんの。
だから出るんだよ。
だから出させろよ。
さっきから言ってんじゃん、出させろよ。
いや、出せって。
出せってば。
出せよ。
出せって。
出せー、出せー、出せー。
出してくれよー。
頼むから出してくれよー。
ここから出してくれー。」