視力 2004-08-16
「最近、視力が落ちてさー。」
「へー。」
「どーもダメ。」
「いくつ?」
「なに?」
「いや、視力はいくつ?」
「うー、ここんんところ計ってないからわかんない。もともとは1.2はあったんだけど。」
「1.2か。けっこう視力あったんだな。」
「まーな、今はどれくらいだろ。・・・・・たとえばさ、あれ。」
「あれ?」
「ほらあれ。あそこに黄土色のタイル張りのビルに看板付いてじゃない、縦長の。」
「ああ、あるね。」
「あのくらいの看板の字なら読めたけど今はダメ。読めない。」
「へええ。オレそんなに視力悪くないからかろうじて読める。‘英会話スクール’って書いてある。」
「なんとなくおぼろげに読めるような気がするくらいかな。そんでその看板の向こう、青地に白文字の看板があるだろ。」
「ん? どれ?」
「ほら、‘文房具・事務用品’って書いてある看板だよ。」
「あ、多分アレかな?」
「もうアレくらいだとまったく何が書いてあるかわからない。たぶんあれくらいならちょっと前まで読めたと思うけど。」
「へー、あんなの読めたのか。オレはもう全然読めないよ。」
「あとはそのすぐ横の白地に赤字の看板、‘処方箋承ります’って書いてある看板。」
「どれ? あ、あれか?」
「あんなのもうまったく読めない。」