妻の機嫌をとる夫、というだけのお話
時々、妻のことをいい女だと思う時がある。
時々忘れそうになるが、うちの妻は女であるのです。
そして世の女性の多くがそうであるように、わが妻も男である僕にはよくわからない理由で、時に理不尽なほどに不機嫌になることがります。
そういった時、女性には不機嫌になる理由が当然あることですし、それを世の男性に説明してくれることもあります。が、その理由はたいてい男性には「なんでそんなことでそこまで?」と言いたくなるような些細なことであったり、理由を聞いても意味が分からないといったことが多いのです。
妻の不機嫌さを理解できず、「どうして女という生き物は馬鹿なんだろう?」「どうして女ってこうも理不尽なんだ」と嘆いている夫たちよ。それにはちゃんと理由があるのです。女という生き物が馬鹿なのは、あなたのように嘆くしか能のない愚かな夫でも結婚できるように必要だったからだし、あなたとうっかり結婚してしまうという理不尽さにも耐えているのだからバランスはとれているのです。
それはさておきわが妻の機嫌が悪いのです。
世の畏き男性は妻の機嫌が悪い時、察知して避難したり、さりげない気づかいをみせたりと巧みに妻の機嫌を良くしてみせるのでしょうが僕には無理です。
なぜなら僕は、もし目の前に妥当かつ賢い選択肢と頭が悪そうだけど面白そうな道があったら、必ず頭が悪い方へ進む、そういう男だからです。
機嫌の悪い妻へ正面突破、そのご機嫌を取ってみようではないかと挑むのです。
で、手っ取り早く褒めてみようと試みるのです。
「ねえねえ、奥さんよ」
「あ”?」(あからさまに不機嫌な声)
「あ、今日は何かいつもより可愛くない?」
「は、何言ってんの?」
「いやいや、ちょっと思ったことを言ってみただけ。」
「馬鹿じゃないの」
「ほらあれ、あの人、新垣由衣に似てない? 目と鼻の感じとか」
「あたしと新垣由衣の目鼻がどう似てるってのよ! 適当なこと言うな!」
「位置と・・・あと数とか」
しばらくして、「実は、ひそかに耳の数に自信を持ってた」と答えた我が妻が、口のことについて言わなかったのは自分の口数の多さをわきまえていたからだと思われる。
こういう時、我が妻のことをいい女だと思ってしまう。