馬鹿ばかり
出勤のときに寄るいつものコンビニへ行くと見たことのない女の子がレジをしていた。
・・・・・・・か、かわいい。
そのレジにいた新人らしい女の子はかわいい、ちょっとそこいらにいないレベルのかわいさだった。
でもよく考えてみれば別にレジの女の子がかわいいからといって僕にいいことがあるわけではない。そのコンビニで売っているポカリが安くなるわけでもパンがおいしくなるわけでもない。個人的にそのかわいい娘と親しくなれるというわけでもない。
レジにはたまたま二人のヤローが並んでいたのだけど妙に嬉しそうな表情で並んでいる。僕はその後ろに並んだ。やはり新人なのか昨日までいた無愛想なお姉さんよりレジを打つ手がもたついている。新人だからしょうがないのだけれど僕としては朝はレジは馴れたすばやい手でこなして欲しい。ちょっとかわいいからといっても何の役にも立たないのだ。それよりも手際よく仕事(レジ)をこなしてくれる方がどれだけいいことか。
それなのに僕の前に並んでいるヤロー二人はその新人のレジの娘を見ながら嬉しそうにニヤニヤしている。
君ら馬鹿か?そのレジの娘がどれだけかわいかろうが美人だろうが君らに関係ないだろ。それよりサッとレジをこなしてくれる方がよっぽどいいじゃないか。違うのか?
とりあえず馬鹿二人のうち一人がレジを終えた。いつもの無愛想なお姉さんならもう三人はこなしているだろうという時間がかかっている。僕はそう考えて少しいらいらしたのだけれど、もう一人の馬鹿はすごく嬉しそうな顔でレジをやってもらっている。嬉しそうな顔でそのレジの娘を眺めている。もうほんとうに君は馬鹿か?いや馬鹿なんだろう。とにかく僕としてはコンビニのレジなんてとっとと済ませて欲しいんだよ。
そんなふうに僕がいらいらしていると店の奥からいつもの無愛想なお姉さんがやってきて新人の娘の隣、「休止中」の札をかけたもう一つのレジに立ち、僕に向かって言った。
「お待ちのお客様、こちらへどーぞ。」
思わず僕は返事した。
「何をするんですか?」
「え?お会計ですけど・・・・・。」
つまり、馬鹿は三人いたのだ。