かおなし=Faceless

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妻に「犬」呼ばわりされる

 夕食を囲む、家族団らんの時、妻が何の脈絡もなく僕を指さして言いました。

 

 「おまえは犬だ」

 

 妻は人としての軸がずれているというか傾いているというか、常々おかしなことを言うのです。近頃では僕もまあいい加減慣れてきたと思っていたのですがこれにはちょっと面食らってしまい

 

 「なんだって?」

 

 数秒かかってからこう問い返すのが精一杯でした。

 妻は僕の問い返しには答えず、次に小学生の息子(兄)を指さし

 

 「あんたも犬ね」

 

 次に小学生の娘(妹)を指して言いました。

 

 「あんたは・・・やっぱり犬ね」

 

 僕と息子はポカンとして妻を眺め、娘は我関せずと黙々と夕食を食べ続けていました。

 

 「どうやら私の言ってる意味を理解していないようね」

 

 などと妻が言いましたが、〇チガイの言うことはキ〇ガイ同士でも理解できないらしいですから凡俗たる僕に妻の言ってることなど理解しようもありません。

 

 「君の言うことをまったく理解できないけど、家族を指して犬呼ばわりするのは(頭が)おかしいということはわかる」

 

 僕がそう答えると妻が言いました。

 

 「よく言うでしょう、世の中の人間は大別すると『犬』的な人間と『猫』的な人間に分かれるって。そうやって考えるとあんたたちはみんな『犬』っぽいよね」

 

 つまりあれか、犬派猫派、じゃなくて猫系男子とか犬系女子みたいな話題か? 

 なるほど、自分のことはよくわからないけど確かに息子と娘は猫というよりは犬、子犬っぽい気もする。しかしそういう話題をしたいのならば、なぜ妻は順序を追って話ができないのだろうか? 

 僕が内心諦観にも似た心境であきらめの境地をさまよっていると、妻が僕と息子に向かって問いを投げかけてきました。

 

 「まああんたたち3人は『犬』だとして、私はどうかしら?」

 

 息子と僕は、特に示し合わせるでもなくほぼ同時に答えました。

 

 「クマー!」「熊だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そこは『猫』って答えるところだろ!」などと妻が怒りましたが、僕も愛する妻に嘘などつけないのでした。息子も愛すべきは母に正直なのでした。

 夕食後、家族会議が開かれることとなり、自らを『猫』とする妻の主張が一部認められることになりました。最終的に僕と息子と娘は『犬』系、妻は『大熊猫』系と決定し家族会議は無事終了したのです。

 惜しむべきは妻が『大熊猫』がどういう猫なのかよくわかってないことくらいでしょうか。チベット原産の愛らしい猫だというのに。