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昨日昼飯を職場の近くの定食屋で食べていたときのこと。
食べ終わって会計の前にちょっとトイレに行ってもどってみると、なんだか店の中がざわざわと騒々しかった。
はて、なんだろう? と思って様子をうかがってみると、驚いたことに僕が食い逃げと勘違いされているようなのだ。どうやら食器を下げに来た女性店員が僕がトイレに行ったのに気がつかず早とちりしたらしい。
正直なところ食い逃げと間違えられてムカッとしたのだけれど、気短に怒るのもどうかと思って口から出かけた文句をささやかな努力により飲み込んだ。
理由は面倒くさいから書かないが、この世には何軒か僕が二度と行けない店というモノが存在している。短気を起こして今更「行けない店のリスト」に新たな項目を付け加えることもないだろう。言っておくが行けない理由は決してその店で暴れたりしたとかそういう理由ではない。
僕が会計伝票をつまみ上げると、すぐ横で僕のことを食い逃げと勘違いした女性店員が「すいません、すいません。」 とやたら謝っているのでここは軽く冗談で流しておこうと思い
「食い逃げだったら捕まらないうちに早く逃げ出すべきでしょうか?」
と、女性店員に尋ねてやると彼女は一呼吸するほどだけ考えてこう切り返した。
「では逃げられる前に、警察を用意しておくべきでしょうか?」
僕はこういうちょっとした切り返しをしてくる女性が大好きなので、つい嬉しくなって彼女のことを褒めた。
「いいねいいね、その切り返し。味の方もその程度に上手ければ、値段ほどの価値があるんだけれど。」
こうして、「行けない店のリスト」に新たな項目がまた一つ加わったのだ。