石川君の恐い話
『じゃあ俺もせかくだからお返しに一つ恐い話をしてやるよ。これは高校の同窓会のときの話なんだが、飲み屋を幹事が予約して、待ち合わせは参加者全員が直接その飲み屋へ行くって決まってた。で、俺も頼まれてちょっと会場係みたいなことをやって幹事の手伝いをしてたんだ。そしたらさ、予定より参加者が一人多いんだ。』
「普通はドタキャンとかで予定より参加者が少ないもんだよな。」
『ああ、少ないことはあっても多いってのはおかしいだろ。で、俺は幹事の間違いかな?って思って店にお願いして急遽予約よりも一人分多く料理を作ってもらったんだ。』
「それでまさか同窓会の中に知らないヤツが一人混じってたとか?」
『馬鹿、それだったらそれは‘恐い話’じゃなくて‘変な話’だよ。』
「まあそうか。」
『でだ。さすがに急に一人分の追加を頼んだものだからお店の方もすぐに料理を準備できないわけだ。で、10分くらい待ってくれって言われた。』
「まあ、仕方ないね。」
『で、人数の集計やら席決めをしていた幹事にその旨を伝えた。幹事は会場に集まったみんなにその旨を伝えて、まあ、予定よりは多少遅れたもののその後無事同窓会は始まった。』
「よかったじゃん。で、これのどこが恐い話なんだ?」
『いいから話は最後まで聞けよ。でまあ、無事に始まった同窓会なんだけど困ったことに始まったすぐくらいから幹事にネチネチ絡みだしたヤツがいてさ、同窓会の開始が遅れたことでけちをつけだしたわけだ。‘人数の確認が甘い’とか‘幹事の準備不足のせいだ’だとか言ってな。』
「うわー、やなヤツ。たかが10分くらいで。」
『ああ、幹事っていったら楽しく同窓会をやるための功労者だろ。だったら多少の失敗は笑って大目に見るもんさ。』
「誰だよ、そのけちつけたヤツは?」
『岡山。』
「うわ、なんか納得。そういや石川君、同じクラスだったね。」
『で、可哀想に幹事は同窓会が終わるまで2時間ほど延々と岡山のヤツに絡まれてたってわけだ。周りがときどき‘まあまあ、そのへんでやめとけよ’って止めたりもしたんだけど聞かなくてな。』
「うーむ。確かに岡山君に2時間も絡まれるというのは幹事にとって見ればある意味恐ろしい体験だったとは思うけど、それは‘恐い話’とは普通言わないんじゃないかい?」
『それがさ、後で聞いたんだけど。あの同窓会の全員に確認したんだけど、誰一人として岡山に同窓会の連絡を回してなかったんだ。』
「え? それどういうこと?」
『誰も同窓会の場所も日時はおろか、同窓会をやることすら教えていないのにもかかわらず岡山は同窓会の当日、会場に一番乗りして待ってたんだよ!』
「それは恐すぎるわ!」