妻に「お得」と言われる
どうして妻と小学生の息子がそういう話をすることになったのか、僕がそのいきさつを知ることはないのですけれども。
甘えん坊な息子は妻にべったりで、よく二人で僕にはわからない会話をしているのですがその日はなぜか家のローンについて話をしていました。
どうやら息子は父である僕や母(妻)が死んだり病気で働けなくなったらローンが払えなくなって家から追い出されると思っているようでした。ちなみに僕と妻は共働きです。
妻は息子にそういう心配は必要ないと優しい口調で説明していました。
「もし、お父さんかお母さんが死んだとしても生命保険もあるから生活の心配はしなくても大丈夫よ」
考えてみると、父母が死んだときの悲しみよりも家のローンが心配な小学生というのはどうなんだろう?
僕の疑問をよそに妻が息子に説明をしていました。
「もしお母さんである私が死んだ場合、生命保険会社から保険料として3000万円が支払われます。お父さんが働いてローンを払い続けることが可能で生活費が足りない分はこの3000万円から払います。余裕です。」
息子はうんうんといった感じで妻の説明を聞いています。
「もしお父さんが死んだ場合、やはり生命保険会社から保険料が同じように3000万円支払われます。そしてさらに、我が家の住宅ローンはお父さんの名義で借りているので債権者である銀行がローンが破綻するのを防ぐためにお父さんに生命保険をかけています。お父さんが死んだらローンの残りがその生命保険で支払われて、ローンそのものが無くなります。つまり! 借金(ローン)がなくなった上に生命保険料の3000万円が手に入り、お母さんが働く収入もあるので・・・」
妻は高らかに宣言しました。
「(お父さんが死んだ方が)とてもお得です!」
ええ、僕はお得ということがわかりません。
なぜ妻が得意げに息子に宣言したかもわからない僕は愚かな夫なのです。
妻のお得宣言を聞いて息子がなぜか「おおー」と言いながら拍手していたのも理解できない父なのです。
愚かな僕は妻と息子と分かり合うことすらできないのです。