ファミレスの新人 2004-08-10
ファミレスのメニューは何でもあるようでそうでもない。
男ばかり三人、石川君と福岡君とファミレスへ行く。
注文をとりに来たウェイトレスは名札に「新人」と書かれた女の子だ。
「えと、ご注文をお伺いします。」
なんとなくたどたどしい口調で、手元の小さなオーダー用の端末機のボタンを押す。
僕が三人を代表して注文を言う。
「デミグラスハンバーグのAセットとナスとトマトのラザニア、それとぶたしゃぶ定食。」
新人の女の子は一生懸命端末機のボタンを操作する。眉間にしわを寄せ、すごく必死にボタンを押す。
「あの、すいません。もう一度お願いします。」
眉間にしわをよせたまま女の子が言う。
少し、僕が早口過ぎただろうか? 今度はゆっくり丁寧に言ってみる。
「まず、デミグラスハンバーグのAセット。」
「はい、デミグラスハンバーグのAセット。」
女の子が復唱しながら端末機のボタンを押す。
「ナスとトマトのラザニア。」
「はい、ナスとトマトのラザニア。」
「それとぶたしゃぶ定食。」
「はい、ぶたしゃぶ定食ですね。」
慎重に端末機を操作する女の子。
女の子は端末機を眉間にしわを寄せたままじっと睨みつけながら僕に尋ねる。
「デミグラスハンバーグのAセットのお飲み物はなにがよろしいでしょうか?」
「コーヒー。ホットね。」
「お持ちするのは食後でよろしいでしょうか?」
「はい、食後で。」
女の子はやっぱり眉間にしわを寄せたまま端末機のボタンを操作する。そしてひととおりボタンを押し終わったのか、すごく晴れやかな笑顔で僕にむかって言った。
「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「はい、いいですよ。」
僕がこう答えると、女の子は僕のとなり座っていた福岡君に向かってこう言った。
「それではお次のお客様、ご注文をどうぞ。」